大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ネ)147号・昭28年(ネ)144号 判決

控訴人伊藤政之助の本件控訴並びに参加人金沢甚衛の本件参加の申出はいずれもこれを却下する。

控訴費用並びに参加に関する費用は参加人の負担とする。

二、事実及び理由

参加代理人は控訴人伊藤政之助のため、当裁判所に対し昭和二十八年一月三十一日控訴の趣旨として「原判決はこれを取り消す。被控訴人の請求はこれを棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求める旨の控訴状を提出し(当庁昭和二十八年(ネ)第一四四号事件)、且つ、民事訴訟法第七十一条前段の規定に基き、右事件に当事者参加をなす旨の申出をなした。而して右申出書によれば、「控訴人及び被控訴人は本件東京都杉並区上荻窪二丁目八番地所在家屋番号同町十三号一、本造瓦葺二階建住家一棟建坪三十九坪九合二勺、二階九坪及び一、木造板葺平家物置一棟建坪三坪七合五勺の敷地二百六十九坪につき控訴人が借地権を有することを確認する。訴訟費用は控訴人及び被控訴人の負担とする。」との判決を求める旨の記載があり、参加代理人は控訴人伊藤政之助のための控訴及び参加人金沢甚衛の参加の理由として別紙参加申出書及び参加申出補充書記載のとおり主張した。

よつて職権をもつて右控訴並びに参加の適否につき審究するに、本件は前記参加申出書(一)、記載のとおり、本件土地の所有者(賃貸人)たる原告(被控訴人)が賃借人で本件建物の所有者たる被告伊藤政之助との間の賃貸借契約解除を理由として同被告並びに本件建物の賃借人たる被告金沢甚衛及び居住者たる被告根上三雄を共同被告として東京地方裁判所に対し建物収去土地明渡等の請求訴訟を提起し、同裁判所は審理の結果(被告伊藤政之助は不出頭)、昭和二十七年十二月二十日原告勝訴の判決言渡をなし、これに対し、被告伊藤政之助は控訴の申立をしなかつたが、被告根上三雄は昭和二十八年一月二十七日控訴の申立をなし(当庁同年(ネ)第一二一号事件)、次いで被告金沢甚衛は同月三十一日自らの控訴申立をなすと同時に被告伊藤政之助のため控訴の申立をなし(当庁同年(ネ)第一四四号事件)、且つ、民事訴訟法第七十一条前段の規定に基くとして被控訴人光明院、控訴人伊藤政之助間の本訴訟に当事者参加の申出をなした(当庁同年(ネ)第一四七号事件)ものであることは本件記録に徴して明かである。

然しながら、

(一)  現行民事訴訟においては、当事者間の本訴訟につき判決言渡があり、当事者から控訴の提起がない場合において、第三者が民事訴訟法第七十一条による当事者参加の申出をなすため、自己の名において敗訴の当事者のため控訴を提起し得べきものとする条文上の根拠に乏しいものといわなければならない。従つて参加人金沢甚衛は同法条による当事者参加のため、被告伊藤政之助のため控訴を提起する権限がないというべきである。又現行民事訴訟法上控訴提起につき民法第四百二十三条所定の如き代位権を認めた規定もないから、参加人が本件建物の賃貸借契約上の債権に基き、債務者たる被告伊藤政之助を代位して同被告の控訴権を行使するが如きことは全然許されないものといわなければならない。その他参加人が被告伊藤政之助のため適法に控訴をなし得べき根拠を発見することができない。参加人の所論は畢竟独自の見解に立脚して論をなすものであつて到底これを採用し難い。

されば控訴人(被告)伊藤政之助のため(参加人)金沢甚衛のなした本件控訴は不適法であり、且つ、その欠缺が補正することができないものと考えられるから、右控訴はこれを却下すべきものとする。

(二)  前記控訴が却下を免れないものであること前段説示のとおりである以上、原告光明院、被告伊藤政之助間の本訴訟は既に原判決に対する控訴提起期間の満了により確定し、従つて右本訴訟は当裁判所に係属していないものといわなければならない。

而して参加人の本件参加の申出は右本訴訟が当裁判所に係属することを前提とするものであるから、本件当事者参加の申出は参加要件を欠く不適法のものというべく、右参加要件の欠缺は補正することができないものと認められる以上、本件参加の申出は却下を免れない。

よつて民事訴訟法第三百八十三条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 渡辺葆 牛山要 野本泰)

当事者参加の申出書

参加の理由

(一) 被控訴人(原告)はその所有の東京都上荻窪二丁目八番の宅地の内二百六十九坪を控訴人(被告)に建物所有の目的で期間を定めず賃貸し、控訴人は同地上に本件建物(原判決末尾添附の目録記載のもの)を建築所有しているものである。

参加人は同建物を控訴人から賃借し、その内階下五坪に根上三雄を同居せしめ、その余の部分に居住しているものである。

然るに被控訴人(原告)は、控訴人が昭和二十五年一月以降の延滞賃料を同年十月十日以後七日以内に支払わないときは当事者間の土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたところ、控訴人はこれを支払わないので同賃貸借は同年十月十七日の経過と共に解除されたものである。故に控訴人は右建物を収去してその敷地を被控訴人に明け渡す義務があるのにこれを履行せず、なお、これがため被控訴人に対し相当賃料たる左の賃料と同額の損害を被らしめていると主張して控訴人に対し本件建物を収去し、その敷地二百六十坪を明け渡し、且つ、昭和二十五年一月一日以降同年七月三十一日まで一ケ月一坪につき金一円三十銭、同年八月一日以降明渡済まで一ケ月一坪につき金三円八十八銭の割合による金員の支払を求め、同時に参加人及び根上に対しては同人等は被控訴人に対抗し得べき何等の権原なくして右敷地を占有し被控訴人の所有権を侵害していると主張して本件建物から退去し右敷地の明渡を求める訴を東京地方裁判所に提起したものである。

ところが控訴人は同事件につき適式の呼出を受けながら、その口頭弁論期日に出頭せず、且つ、適式の答弁書その他の準備書面を提出しなかつたので被控訴人の主張事実を自白したものとみなされ、昭和二十七年十二月二十日被控訴人の請求通りの判決言渡があつたのである。

(二) 然れども、前記賃貸借契約の解除は無効のものであつて、本訴訟は参加人等建物賃借人を退去せしめ本件建物を空家として控訴人から被控訴人に譲渡せんがため当事者が通謀した所謂馴合訴訟であつて、若し参加人が拱手傍観するにおいては、控訴人は自らは控訴をせず、控訴人に対する被控訴人(原告)勝訴の原審判決が確定し、参加人の控訴人に対する本件建物の賃借権は侵害される虞あるをもつて、参加人は民事訴訟法第七十一条前段の規定により控訴人のため別紙控訴状を提出して控訴を提起するとともに本申立に及んだ次第である。

なお、参加人及び根上に対しても同時に被控訴人勝訴の判決言渡があつたが、参加人等は同判決には全部不服なるをもつて、根上は昭和二十八年一月二十七日控訴を提起し(御庁昭和二十八年(ネ)第一二一号事件)、参加人は控訴人伊藤政之助と共に別紙控訴人をもつて控訴を提起するものである(御庁昭和二十八年(ネ)第一四四号)。

右当事者参加を申出でる。

昭和二十八年一月三十一日

参加代理人 鈴樹忠信

同 野間彦蔵

参加申出補充書

参加人は御庁昭和二十八年(ネ)第一四七号建物収去土地明渡訴訟参加申出事件につき、参加の理由を左の通り補充する。

(一) 参加申出書「参加の理由」において陳述した如く、本件土地の所有者たる原告(被控訴人)光明院は同地の賃借人にして本件建物の所有者たる被告(控訴人)伊藤に対し地代不払による同地の賃貸借契約解除を理由として本件建物収去土地明渡請求の訴を、又同建物の賃借人たる被告金沢及び同根上三雄に対し、同地の不法占有に基く退去明渡請求の訴を夫々提起したものであるが、被告(控訴人)伊藤は全然応訴しなかつたので、原告の主張事実を自白したものとみなされ被告(控訴人)金沢及び同根上は原告主張の賃貸借契約の解除を有効と認められ、何れも敗訴の判決を受けたのである。

従つて被告金沢及び根上は原判決に不服なるを以て夫々控訴したが、被告伊藤は控訴する模様がなかつたものである。

而して原告と被告伊藤間の右判決は直接被告金沢等にその効力を及ぼさないので、判決の結果は当然被告金沢等の本件建物の賃借権に消長を及ぼさないとするも、若し同勝訴判決の結果被告伊藤の借地権は消滅し、本件建物の収去及び土地明渡の義務が発生したとすれば、被告(控訴人)等の本件建物の賃借権はその根拠を失い、原告から被告金沢等に対する退去明渡の訴訟において勝訴判決のため被告金沢等に不利を招来するを保し難いものなるをもつて、被告金沢は民事訴訟法第七十一条前段の第三者に該当するものなれば、原告(被控訴人)の請求を棄却し、被告(控訴人)が本件土地につき賃借権を有することの確認を求めるため本参加申出をしたものである。(大審院昭和十一年(オ)第二一〇八号昭和十二年四月十六日判決、民事判例集第十六巻四六三頁参照)

(二) 当事者参加申出は判決言渡後、上訴前においては如何なる方式により如何なる裁判所になすべきかについては疑問がない訳ではないが、当事者参加をしようとする者は自ら上訴を為すと同時に上訴裁判所へ申出を為すべきものと解する。敗訴者を補助するものでもない者が、自ら上訴をなすというが如きは奇異の感がない訳ではないが、斯様に解しなければ本訴訟の係属中なる限り何時でも当事者参加を為し得べきものと定めた法意は到底達し得ない。殊に本件におけるが如く原告の訴に対し応訴せず、原告の主張を自白したものとみなされて敗訴の判決を受けた被告伊藤が控訴する筈がないので被告金沢等に控訴の権利がないとすれば、参加の機会は全く失われることになるものである。(中島弘道著民事訴訟法論上巻三二三頁)によつて被告(控訴人)金沢は被告伊藤のため控訴をなすと同時に参加申出をした次第である。

右の通り陳述する。

昭和二十八年五月二日

参加申出人代理人 野間彦蔵

鈴樹忠信

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